久米島のサンゴ大群集
2010年 05月 18日
透明度は...港からの距離は...風向きの影響はどの程度受けるか...使う深度と流れはどうか...コース取りと遊泳距離は適切か...ダイビングポイントというのはそのような過程を経て開発されます。
その要件を満たさなかった海域は無限にあり、そこでダイバーが潜ることはほとんどありません。
興味深い画像を紹介します。ダイバーの趣向や安全マージン、生物層、トレンド...その他諸々から外れた海域に存在する久米島の海の姿です。漁業関係者の間ではナンハナリと呼ぶ(僕はここを含めた群集のいくつかを総称して久米島珊瑚街道と呼んでいます。)海域に広がる、まだ多くの皆さんに紹介していないダイビングサイトの光景です。
1998年の壊滅的なサンゴの白化現象から数度の白化被害、オニヒトデの食害、等々を経て、久米島のサンゴはまだまだ回復の途上ですが、ここ数年の回復傾向には島民も胸をなでおろしています。そして中でも最も回復が顕著なのは島の北側(シチューガマからシーマガイにかけて)と南側の(親子岩~アーラ、そしてトンバラ)ダイビングサイトである。これが現在の久米島のダイビングシーンの定説といってもいいでしょう。ブリーフィングでもそれを聞くゲストの方は多いと思います。
この画像はそのどこの海域にも属しません。そして写っている枝状ミドリイシ群落、この大群落の規模はおそらく東京ドーム2個分を遥かに上回ります。視界の端から端までは勿論、1ダイブ泳ぎ続けても果てしなくこの光景が続いているのです。サンゴの被覆度は限りなく100%に近く、その多くがこの種不明のミドリイシという最大級の群落です。調査段階では縦横数百mの規模の測定しかできません、それほどまでに巨大なのです。
自分が独立したのは2008年の4月ですが、ちょうどその頃は太モズクの収穫の最盛期が始まる頃で、まだほとんど仕事のなかった自分は海人のチームのモズク船に乗ってよく収穫を手伝っていました。港で様々な話を聴きました。僕も話をするなかで、自分が何をしたいのか話していました。
2008年には海人の田端敦から電話がありました。仕事の合間にサンゴを見ていてくれていて、モズク畑の近くでリュウキュウキッカサンゴの大群生をみつけ、連絡をくれたのです。
その海域のキッカサンゴの規模は1998年の世界的白化現象以来、久米島のどこでも見れなかったものでした。
2009年の8月、この大群落を田端敦、裕二のチームとともに発見しました。この海域は、海人が電灯漁や網を張ったりしている周知の漁場で、意外とエダサンゴが多い、ということは経験上皆知っていました。
海人にこの海域を尋ねれば皆知っています。簡潔な会話でその隠れ根がお互い解るくらいです。そんな場所ですからダイビング船が入っているのを今まで見たことはありませんでした。
皆さんにお伝えしたいことは、この画像が撮影されたのは水深30mだということ、そして人知れずサンゴの生息水深限界付近の定説を越えてこれほどの大群落を作りえるということ、そしてそれはダイビングポイントとしていくつかの基準から逸脱しており、漁場の対象ともならなかった故に護られてきたということです。この事例は全国的にみてもきわめて貴重な環境であると共に、ダイバーが殆ど知らなかった海の姿です。
ここ2.3年で浅海、特に島の南側のダイビングポイントでちらほらと確認されるようになったこのミドリイシ、このサンゴはセキセイミドリイシ、あるいは最近になって名前がつけられたアカジマミドリイシに非常に似ていますが、新種の可能性もあります。琉球列島の中でも比較的分布が狭く、量的にも少ないといわれている枝状サンゴですが、そうだとしたらそれがこれだけの規模で、しかも研究のほとんど進んでいない水深30以深で群落を形成していることは驚きです。久米島におけるこのサンゴの供給源は、実は考えられているより遥かに深い水深からなのかもしれません。逆に周辺には多くの浅海で見かけるサンゴ達も居ます。昨今の高海水温を嫌い、あらたな生存場所を求めてこちらの比較的深い場所への避難が加速している可能性もあるのです。
僕は可能な限りダメージを与えずに、この海域を少しでも皆さんに紹介できる道を模索していこうと思います。勿論ここだけではなく、数多くの素晴らしいポイントでも。ダイバーであれば皆がそう思うはずですし、そしてそれは私達島のサービスの人間も同じです。そして久米島住む皆さんに、自分の海にこれほどすごい命が育っていることを知って欲しいのです。数年後にたとえ数箇所でもいい。海上航行、漁業の妨げにならない海域で、心晴れやかに係留できる潜降ブイが設置される日が来ることを願います。ウーマガイやシチューガマ、親子岩、あの素晴らしいポイント群でそれが出来たらなんと幸せなことでしょう。そう思いませんか? 先人が開発してきたこのダイビングサイトは、すぐ隣の未知の海域を、遠く離れた島々を、数年後に素晴らしいサンゴで覆ってくれる、とても重要なサンゴの供給源でもあるのですから。
現にその兆候は一昨年からあるのです。確かに僕は数年前まで、久米島もようやくサンゴが回復してきた、そして最も育っている海域がシチューガマというダイビングポイントだと思う、とゲストに説明していました。ただ少しだけ思い違いをしていました。そのポイントは確かに非常に豊かです、しかし同時に周辺への新しい命の供給源でもあり、そして水深30m以深からもそれはあったのです。そうして育まれた楽園は、豊富な多様性を獲得して予想外の場所に、むしろポイント開発されつくした海域のすぐ傍らにひっそりとありました。
僕はこの2年、港や海で皆さんに様々なことを教わり、今まで無かった視点をもらいました。
海人から学べたからそれが見えた。今後も島のダイビングサービスの方々、海人の方々に頼り、力を借りることが出来たらうれしいです。そうできる日が一日も早く来るように自分も力を尽くします。
あの日、水底に僅かに育つこの枝状サンゴになにか気配を感じ、僕はひたすら深い沖へと吸い寄せられるように泳いでいきました。しばらく泳いで背中がざわつきました。遥か遠くの巨大な根を一面にこのサンゴが覆っているのが見えたから。気配は確信に変わり、更に泳ぎ続けること数分、僕は大平原の上空にいました。眼下は一面の桜吹雪。僕はこれを見たその日を忘れないと思います。
どうか皆様、これからも久米島の海をよろしくお願いいたします。
-追記-
この調査、報告はWWFジャパンの支援を受け、久米島応援プロジェクトの一環として実施された調査の中で発表することができました。心よりお礼申し上げますと共に、久米島の環境保全と持続的発展のためのより一層の支援をお願いする次第です。
涙が出そうになりました。
本当に凄い!!
生命の力強さや可能性を改めて感じました。
とても難しいかもしれませんが、この感動を沢山の方に直に感じて欲しいと思います。
自分もこの海に潜りてぇ~!!!
おめでとう。 ありがとう。 ありがとう。
ほんとにありがとう!海に君に敦くんたち海人や久米島の方々に!
良速さん:偶然ですが、この群落の片鱗がかすかに視界に見えたとき、片隅でそれを思いました。ほんとうに素晴らしい出会いだったし、気づき、でした。
hamaさん:こんなダイビングもたまにはいいですよね? これからもそんな遊びを少しだけ交えながら、この島を楽しんでいきたいですね、よろしくお願いいたします。
中年ダイバーさん:次の機会に・・・是非!!
久米島のパワースポットに1票!
ひよこさん:ダイバー復帰、おめでとうございます! そして近いうちに一緒に潜り、こんな光景を眺め涙できることを願っております。
ハリーさん:86年とはすごい、是非見てみたかったなぁ。その時のイノー・・・ 今はその第半歩だとおもいます、今後ともよろしくお願いいたします。
nobuさん:21時からのニュースでも報道されたようです。また調査、研究、活動についての報告をさせていただきますね。
来月是非、海の邪魔にならない範囲でこの世界を覗けたら嬉しいなぁと思っています。マスクも初めて新調したし!(マンティス5のクリアを高購入しました!1990年に購入してからずっとマンティスを使ってましたが、ついに代替わり(笑)さぞかし視界も明るいだろうなぁ(笑))。そんな私のDiving Styleを理解して楽しませてくれるColor CodeさんのDiving Styleに共感しているし、再海出来ることを楽しみにしていまーす!
alohaさん:僕も海に入ることで、様々なことを癒してもらいましたし、これからもそうでしょう。波音だけでもそうなのですから、命が生まれた海の中であるならなおさらですよね。 近いうちに一緒にこの海域を潜れるような環境を用意したいと願っている、でなく、そうするつもりという意思で進んでおります、楽しみにしていてください。
夜の3分間ニュースや新聞でも見ることができました。
想像もできない広さですが、
この範囲がますます広がっていくものなんですか?
いつまでも成長していくことを祈ります。。。
これからが難儀かな?
フレームに収まりきらない感動ですね。。
foxxzappaさん:そうですね、これから保護、利用することが一番難しいですね、でも覚悟の上で準備してきました。難儀は承知です。
mogさん:そうなんです、これは見て欲しいんです、ぜひとも生で。サンゴの力を感じますよ。
当たり前だと思ってた美しいものが脆く砕けてしまうことを知った今、このすごいサンゴを前にして我々は何ができるんだろうね?
落ち着いたら見に行きます。
JENNYさん:僕は90年代後半までの美しいイマズニを知りません。ただこの群集の大切さはわかります。みなさんにお願いしたいのは、なんでもいいんです、このことについて考え、そして話してもらうことです。これからも報告を続けますので、よろしくお願いいたします。
満たされた幸せな気持ちになれました。 ありがとうございます! あつおさん風邪かな? おだいじに。