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サフィリナに魅せられて-海の宝石-

古来、黒潮の恵みで生きる日本の漁師はサフィリナを玉水と呼び、その美しい虹彩に豊漁の兆しを見た。

カイアシ類という極小の生物が居る。人間の眼で見ることのできる最小サイズに近い2~4mmの、copepoda(コペポーダ)とも言われる海の生態系を支える重要な生物群のなかのひとつだ。
Sapphirinaという属名の通り、どの種も宝石のように美しい。潮の通る外海の水深10~20mの中層で、キラッと青く輝く光を見たなら、それがSapphirinaである。そのスペルはまさにサファイヤの事であり、数十種が知られている。その後に続く種名もmetallina(メターリナ)であったり、opalina(オパーリナ)であったりとゴージャスだ。

小難しくなったけれど僕としては、サファイヤのオパーリナ! サファイヤのメターリナ!! と、海の中で見つける度に叫ぶだけで、何か魔法が起こる気にさせてくれるその語感が好きだ。そう、指し棒を振ってエクスペクト・パトローナムを唱えたり、バハムートを召喚するように。
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Sapphirina gemma(?)と思われる個体。体長3mm。皮殻は緻密な何層ものハニカム構造になっていて、受けた光を様々な色で乱反射する。故に透明でもあり、多種多様な色に変化する。
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数秒後に撮影した同じ個体。プレシャス・オパールのような虹彩に思わず息をのむ。
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そして更に同じ個体、瞬間的に透明になってもう肉眼では捉えられない状態。皮殻の内側の内部器官が透過して見えている。

ところでこのサフィリナ、何故一瞬で視界から消えることが出来るのかということについて今年、ワイツマン科学研究所の研究チームがある論文を出した。この複雑な構造の皮殻が外から受けた光を反射し、角度によっては人間には見えない波長の光(紫外光)を反射させることによって(私達人間からみると)見えなくなるという事が判明したらしい。そういえばずっと追い続けていて、眼ではすぐに視界から消えるのに、液晶から見ていると不思議と色を保っていることが多い気がしてきた。気のせいかもしれないけれど、これは何か重要なことを示唆しているかもしれないのでちょっと心に留めておこう。

つまりこの皮殻の構造を分析、応用研究することで非常に軽量の、そしてハニカムの多層構造なだけに強靭な光学迷彩アーマーが出来上がってしまう可能性がある。調査研究にはいつの時代も費用がかかるもので、この研究所がイスラエルにあることといい、背後の軍産複合体の影がちらつく話題でもあった。最近小耳に挟んだ話だが、アンボイナ貝の強毒についての研究に資金を出しているのもこの国経由だそうだ。僕たちはもう、彼らの紡ぐ美しい虹彩と透明感を眺めて、驚嘆の声をあげるだけでは済まさない、実入りを求めずにはいられない、そんな欲深い生物になってしまったのかもしれない。命が繋いできた不思議で美しい造形や構造は今、命を無意味に、無差別に奪う争いの道具にこぞって利用されている。

僕に出来るのは当面、サッフィーリナ!! メッタァーリナ!! と叫びながら海中でこの美しい宝石をわいわい皆で眺めることくらいだ。そしてそのくらいがいいと思う。撮影自体が奇跡の1枚に近い難度なので、画像ストックがなかなか増えず、末永く楽しめるのもサフィリナの魅力のひとつだ。

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by color-code | 2015-09-27 08:34 | サフィリナに魅せられて | Comments(0)

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