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ナンハナリ・ヤセミドリイシ群集2016

同じ海域のサンゴでも、白化しないものとそうでないものがいる。また海域や水深が違うと微妙に被害の傾向が変化してくるのはずっと気になっていました。

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ハナヤサイサンゴや波浪で折れて飛び火して繁殖するようなミドリイシ類も比較的強いし、潮間帯のサンゴにはとんでもなく高い耐性のものが居る。
高海水温というのは白化の大きな要因であるけれどもそれひとつだけではない事は議論されてきたし、徐々に研究成果があがってきました。
他の要因として考えられるのが3つで、紫外線と潮流、そしてバクテリアについてはまったく新たな知見で今冬のサンゴ礁学会でも発表があるそうです、やはりそうだったか、という思いです。興味のあるかたはこちらのリリースを参考にしてください。

・透明度が低い、水深が深いと改善<<<紫外線の強さ>>>透明度が高い、あるいは水深が浅いと悪化
・常にあり、速いと改善<<<潮流>>>澱むような場所では悪化
・外海、へき地だと改善<<<陸性バクテリア>>>河川、湾内、人間活動域の近くだと悪化


ではこの3要素を久米島の各エリアに自分の感覚で当てはめてみる。◎=プラス要因大 ○=プラス要因小 △=マイナス要因小 ▲=マイナス要因大

・ウーマガイ 透明度高い▲/バクテリア平均的△/潮流平均的○
・ナングチ  透明度低い○/バクテリア多い▲/潮流平均的△
・トンバラ  透明度高い△/バクテリア少ない◎/潮流あり◎
・赤灯台   透明度低い◎/バクテリア多い▲/潮流少ない▲

おおまかな指標だけれど、プラス要因が上回ったのがトンバラ。そして事実、白化はしているが、踏みとどまっている個体が数多いのもトンバラ。逆に干潮時に水深50センチくらいになる内海のサンゴ達はほぼ全滅している。紫外線が強烈で、陸生バクテリアが多い内海、潮流の影響も受けづらいという状況ではやはり厳しい。外海にも関わらずウーマガイからトンバラザシにかけての北の棚上の被害が大きいのは、水深が浅く透明度が高いので紫外線の影響が高いのと、満潮時にリーフを乗り越えてやってくる内海の海水と、港内、浚渫された航路内の養殖事業等の陸性バクテリアの影響も強く受けているかもしれない。


このようになかなかに厳しいサンゴ白化の中、ようやく台風も接近するようになりましたが、まぁ遅いですよね。もっと直接的な、自分の身体で感じとれるような希望があってもいいじゃないかという気持ちです。実は海水温の影響をほぼ受けないと思われる種もあります。
下の写真はナンハナリ海域の水深32m、ヤセミドリイシ群集の今。

ナンハナリ・ヤセミドリイシ群集2016_a0060407_15391362.jpg
白化?! なにそれ?

7月下旬くらいになんとなし確信としてあったのですが、ただの一ダイビングガイドなので多少なりとも信憑性を持っていただくには、生き残ったサンゴとそうなれなかったサンゴがは明瞭に確認できる環境になるまで待ってもいいだろいうということで今になりました。
ここ、2年前の2014年の8月にものすごい台風で壊滅しているんですよ、ほぼ完全に更地になりました。浅場は未だに廃墟にしか見えない岩盤が連なっています。でもヤセミドリイシはこの高海水温の中、絶賛回復中。弱ってない、白くない、むしろ生き生き。今まで通りの回復スピードで生息範囲を急速に拡大しています。ヤセミドリイシは暗く深い水深に隠れ住む日陰の存在です。その人知れない大繁栄が再発見されたのはわずか数年前の2010年のこと、NHKとWWFが公式にアナウンスするまで、ほとんどのサンゴ研究者もダイバーも信じてくれませんでした。生存の為に長い年月をかけて褐虫藻による光合成の効率を捨て、骨格の強度を諦め、人の眼の届かぬ深場へ居を移したこのヤセミドリイシは、透明度の高い、太陽光の降り注ぐ浅海では繁栄できません。枝ぶりだって不規則で脆く、とても綺麗とはいい難い。

ちなみに先の指標をナンハナリに当てはまると。
・ナンハナリ 水深深い◎/バクテリア表層のみ○/潮流あり○
となる。ヤセミドリイシがこの海域の中深度を選んだのは決して偶然でないことがよくわかる。 この条件と、強い骨格や褐虫藻による光合成エネルギーを最大限使うといった、多くのサンゴが持つ優位性を放棄した彼らならではの強みがあればこそ、30度の水温でも彼らは無傷なのだ。


サンゴは数え切れない多様性に満ちていて、こんな状況でも希望を見せてくれる。
今、改めて感じるのは生物は、皆つながっており、か弱く、だからこそとても強い、ということ。

なんという命の強さだ。

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by color-code | 2016-09-17 15:45 | ナンハナリ大群集・サンゴの話 | Comments(0)

沖縄は久米島にある小さなダイビングサービスです。


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