低画質も、やり続けると好きになる。
イソギンチャクモエビの模様と色彩は、エビ全般の中でもトップクラスの美しさだと思う。あちこちに普通に居るから、ダイバーにはあまりつきまとわれることはない。彼らにとっては幸運な事だろう。
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ところで人間の眼は、光学的性能という面でそれほど高性能ではないそうだ、いや、むしろ低性能らしい。そういえば視野の左から右隅までクッキリとピントが合っていることもないし、鷹の眼のように数倍に拡大してゆくと遠くに見えていた数センチのコップの柄に小さく文字が見える、とか、そんな様々なことがおおむね困難で、結果、記憶に残る数々の光景で、フォーカスが来ている部分はごくごく僅かだ。自分なりに解釈すると、人は時間を巧妙に利用してすさまじい速さのズーム移動とオートフォーカスで各所にピントを合わせつづけることによって、これまたすごい速さで脳内に書き込んでいるのだろう。それを一枚のイメージ、または動画にして、必要であればや物理的な要因関係なくスチルとムービーの枠を行き来し保存、編集している。ただ、こんな膨大で高度な処理を24時間続けられないし、その内容が必ずしも自分にとって歓迎できるようなイメージばかりではないから、次々に消去していかないと大変なことになる。大切な、忘れたくない事を身体に残すためにも、忘れることは大事なのだろう。おかげで大切なことは忘れないでいられるし、それを更新し、忘れたくないものを新しくしていける。

こんな改まったようなことを書くのは、今使用している撮影機材の画質がなかなかに低いから。かれこれ1年くらい撮影機材の入替準備をしていて、それがまたややこしいことに長びいているのだけれど、今が最も道具が危機的状況です。カメラもハウジングもボロボロまで使い倒して息絶え絶え、液晶はiPhoneみたいに割れまくってるし、シャッターボタンはゆるゆるで、1回切るごとにスレートペンでほじくり返して使っている始末。そんな老朽セットに爆安のクローズアップレンズで無理やり倍率あげてるから、マクロ撮影では画面の中心10%弱くらいを除いて全て歪む。被写界深度もたぶん0.2mmくらいしかないと思う。たまにゲストさんから「どうやってあんなにボカしてんの?」って聞かれます、いやいや、ボカしてるんでなく、ボケ、かつ大きく歪んじゃってるんです。ホントは黒バックの周辺までカッチリとか、引いてこその美学とか言ってみたいけど現状、ちょっと自分には無理ですね。ワイドなんか目も当てられないから最近はもっぱらGoPro頼りです。

そんな風に悪戦苦闘して使い続けるうちにあることに気がついた。このピント以外、ほぼ画面の90%以上ボケボケのイメージって、すごく集中してファインダーを見ながらシャッターを切る瞬間の自分の頭の中のイメージそのものではないだろうか。
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この時はキンチャクガニの卵に眼がはっきり見えていて、そこだけなんとか見たい、撮りたいと思って集中していたはず。中心の抱卵中の卵に向かって、ギュイィーンって視線が集中してゆく感覚は、眼球に映り込んで脳に信号が行って処理される前の瞬間のイメージの数千、数万の中の一枚なのかもしれない。こういうのが撮れるから画質の低い撮影機材も決して悪くない。これ、一眼レフで上等な100mmマクロで撮ったら全部きっちり表現しちゃいますからね、いや、TGシリーズの顕微鏡モードでももっと全然大丈夫なはずなので、こうしたイメージをソフト無しで出力するには、今となっては意図的に光学系の性能を落とすしかない。低画質の機材と格闘しつづけていることは、逆になにか、得難い体験をしているのかも。画質は劣悪で、生態記録としても価値のないイメージ。しかし、僕の経験したその瞬間は確かにこれだ。それっておもしろいと思う。

目線を変えると楽しいな。っていう話でした。明日からしばらく陸仕事&陸遊びです、水中業務再開は4月2日からとなります。命沸きはじめる季節、春の久米島でお待ちしています。

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by color-code | 2017-03-24 13:45 | うみのいろはそらのいろ | Comments(0)
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