海と陸をつなぐもの
2005年 04月 01日
この一大イベント遂行の為には、いかに内地(日本本土のことです)に住んでいようとも身内から召集がかかり、それは内地でたとえ勉学に励んだり、仕事に精を出しているとしても、その当人にとってみれば非常に断りづらい。場合によっては、正月に本家の隣に住んでいるのに挨拶に行かないくらいにマズイ事でもある。が、内地の会社でその理屈が通るはずも無いところがツラいところなのだ。ましてや島に住んでいるのであれば、病床についていない限り、しなかったらもう島には住んでいられない。夕方6時前まで普通に会社に勤務し、その後、畑に直行する人も珍しくない。ここ沖縄では、「キビ刈りしないといけないので仕事休みます。」という理由で会社を休むことは、別に驚くに値しない。身内が事故、並に強い休暇理由となり得るし、実際伝家の宝刀が如く、これを言われたら許可しないわけにはいかないくらいの効力を持っているのである。
さて、少し話を進めよう、手で刈り入れる人も多いキビだが、島に数台ある、キビをビシバシ! グルングルンッ! 力業であっという間に刈り入れちゃう、すっごく頼もしい、朝日に輝くキビ刈り機の雄姿である。
なんというカッコよさ! 僕は前々からこの機械の並々ならぬ力強さに惹かれていたのだ。八重山のほうには更にふたまわり以上も巨大なこの機械が、この時期、縦横無尽に畑を刈り回っているらしい。あぁ、行きたい・・・。
何が良いってこの前に光り輝くぶっといドリルである。実際にはこの部分が穴を掘ったりするわけではないが、僕から見れば、これは武器に使うドリルそのものであり、ヒーロー物で言えば悪役のほうの機械であり、そう、なんというか機械獣なのだ。ガンダム、いやそれちょっと無理か、衰弱したエイリアンになら勝てるのではないか、とマジに思う。初めてこれを見た時に瞬時にそう感じたのは偶然ではないだろう。事実多くのアニメーションや特撮ものに、この意匠は深く入り込んでいる。このドリルの前に、もしも少し伸びる腕が付いているなら、と想像して欲しい。まさにどこかで見たあれ、ではないか。そして、ダイバーなら更にもう一つ、類似を感じるかもしれない。僕にはこのキビ刈り機は、まるでこの生物のモチーフが如く見えるのだ。
このフリソデエビの正面顔と、キビ刈り機の正面顔の極悪さ加減や造形バランスは、驚くほど似ている。この機械にこの極悪そうな眼を描いたら、もうそれは完全に機械獣、そのまんま番組に出せそうな勢いなんである。さて、ここまで感じたら、イメージはどんどん肥大する。下の写真を見て欲しい。これもやはり、フリソデエビなのだが、注目して欲しいのは、額角、頭部のノコギリ状の角の部分である。
この見るからに武器の形状を持ったデザインは、古今東西、実写・物語・アニメーション問わず、あらゆる物語に散りばめられているモチーフだということが良くわかる。それはイッカクの角が、ユニコーンに使われたのと同じことでもある。いや、そんな高尚な話はよしてですね、ヒマなら試しに今、検索サイトで、「ウルトラマン・怪獣」と検索してみれば一目瞭然です。マニアなフィギアサイトが沢山湧いてきますから、ひとつ開いてください。美少女系もかなり入ってまして、寒い思いをする人もいらっしゃるかもしれませんが、図鑑でイトヒキベラ系に見入るよりは、この人たちの方が遥かに普通ですから。僕達、自分が思うより遥かに過剰ででサブいんですから日本人ダイバーたるもの、そろそろそこのとこ、はっきりと自覚して誇らしくタクに遊ぶべきです。
話は戻って、ダイバーの視点から見た彼等怪獣は、驚くほど甲殻類の造形を流用しているのですね。更に「スカイドン」あたりを見ていただければもっとハッキリするかもしれません。そこに見える怪獣の額には、明らかにこのフリソデエビの写真のように、額角が装着されているのです。この怪獣を最初にデザインした人物が、甲殻類図鑑の最初の方の分類ページを、眼をキラキラさせながら食い入るように見つめながら嬉々とスケッチしている風景が、僕にはありありと浮かんでくるんです。
もしかして、あなたがログブックに生物の名前を書き入れるのに、少し億劫になったのなら・・・ロギングや、飲み会にちょっと退屈しているのであれば・・・それならみんながそうしている間、ちょっとだけ道を散歩してみませんか? ダイバーは、陸と海を旅する民です。海だけなんて、なんてもったいない。でしょ?
ほら! 体長数メートルのフリソデエビが、仕事してますよ!
あの車のテール、深海性のサメに似てるとおもいませんか?
そこらじゅう、馬鹿でかい怪獣だらけ、エビカニだらけ!
ダイビングって、なんて、なんて面白いっすね!!