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久米島のサンゴ大群集 -2-

ナンハナリのサンゴ群集の報告を続けたいと思います。

まず、発表を直前まで控えたために、唐突な報告になったことを、この場を借りてお詫びします。本当にすみませんでした。初めてこの場を訪れたのは昨年の8月ですが、見てあがってきたときに、これはひょっとすると、この島のダイビングサービスだけの問題では到底なくなるぞという予感がありました。それから自分ひとりでサンゴ研究に詳しい先輩方々にメールで画像を送り、この予想以上に深い水深と群落規模、そしてこのミドリイシはアカジマミドリイシなのか、はたまた…という質問を何度かお送りさせてもらっていたのですが、なかなか回答をいただけないまま年が明けてしまい、また調査を始めねばと思っていた矢先、琉球大学大学教育センター講師の藤田喜久さんより調査協力の話を快諾頂き、WWFジャパン、漁協の皆さんの力添えも頂き、無事発表となりました。

今回の件は特にリリース前に、個人的、特定の利益を追求する方々によって抜き打ち的に調査、発表され、権利等を主張されることを未然に防ぐ必要がありました。ここは今も変わらぬ豊かな漁場であり、島の人間皆のものであり、更には久米島の豊かさが徐々に減っていっている事に危惧を感じている自分達にとっては、話を聞くだけでもわくわくするような、誇りを少しだけ取り戻せる嬉しい出来事にしたかったからです。これは幸いなことにWWFジャパンの方々とも共有できるものでした。
現に海人もしているダイビングサービスの方は、今回の発表程度のことは何十年も前より知っていたでしょう。あと必要なのは、学術的にこの海域の価値と重要性、規模をはっきりさせることでした。これは研究者の方々にしか出来ない事です。自分の仕事は研究者の方々と久米島を繋げるほんの少しのきっかけを作ること、それだけでした。しかしそのような理由でこれだけ時間がかかってしまいました。重ねてお詫びいたします。ただ自分にそれができたのは、助けてくれた数々の島の人々がいたからです。今回の報道では、発見者の久米島の海人の名前が出ることはほとんどありませんでした。昔から島の海人が恵みを受け取ってきたこのナンハナリの、あらたな楽しみ方を見出したのは、田端敦、そして裕二、栄三お父、勇兄をはじめとする海人の方々です。改めて深い感謝と敬意を表したいと思います、今後とも、よろしくお願いいたします。

さて、今後のナンハナリですが、まずは継続的な調査研究が必要です。この海域を知ることは、沖縄の海の今を知ることだからです。今後も様々な調査研究、そして報道の皆さんがナンハナリを訪れるでしょう。その結果は今後も様々な媒体で発表されてゆくと思います。
かなり近いうちに、行政主導での、保護と持続的利用を前提としたガイドラインの策定が始まると思います。非常に興味深い研究対象であると同時に、ダイビングポイントとしても一定の条件を満たせば充分に楽しめる場所ですので、これについても全面禁止、ではなく、ある程度のルールの下での利用が話し合われてゆくと思います。
勿論、ここは漁場ですので今まで通り、変わることなく海人は漁をするでしょう。久米島の海人は、伝統的にダイビングポイントがたとえ漁場であっても、出来るだけ譲ってあげるという人々です。そうでなければトンバラやイマズニ等の人気ポイントは成立し得なかったでしょう。

久米島のサンゴ大群集 -2-_a0060407_11244048.jpg


そんな中、今日は島内のダイビングサービスの有志が集まり、現況調査に行ってきました。
ここ数日で全国的に知れ渡った海域ではありますが、島のサービスのスタッフの中でも、とりわけ若いスタッフの方々は、報道だけを見て、自分は想像だけが膨らんでしまい、困惑されている方も少なからずいらっしゃると思います。若い世代の支持するものに、基本的に間違ったものは無いと自分は思いますので、まずは見てみないことには、ですよね。どう守るべき、利用すべき、そしてなによりどう楽しむかについて考えることができませんから。これからはトップシーズンになってしまうのですが、こういった合同調査はまた是非開催されることを望んでいます。
調査といっても・・・やっぱり楽しいですよね~♪ 
いやぁ、39度の熱も吹っ飛びますね、エキジットする頃には治っちゃった。


初めて入ったときは単一種が占有する大群落だった(興奮してそう見えていた)のですが、改めてよく見ると、様々な種のサンゴに満ちています。桟海に生息するミドリイシ類も豊富です。勿論魚達も、グルクンやテングハギモドキをはじめ、各種スズメダイ、イソマグロ…変わらぬ久米島の海の風景です。研究者の方に伺ったところ、ここのところ、サンゴは深い場所に行くか、北に上がるかで、浅い海域の悪条件から逃げる傾向にあるそうです。このナンハナリは深く、広く、多様なサンゴが広大に生息しています。まるで深い森のようです。そしてもっと視野を広げてみれば、他の海域を養う、太い幹のようなものなのかも知れません。ここからあらゆる方向に伸びた枝は様々な海域でまた花を開き、私達を楽しませてくれているのです。
by color-code | 2010-05-21 18:20 | ナンハナリ大群集・サンゴの話 | Comments(0)

沖縄は久米島にある小さなダイビングサービスです。


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