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久米島のサンゴ大群集 -4-


先月はじめ、WWFと研究者の方々、NHK、朝日新聞、沖縄タイムス、そして久米島ダイビング安全対策協力会、久米島漁協の皆さんが集まり、3日間にわたる調査、取材を行いました。

今回の最大の目的は、この群集のなかでもひときわ優占度が高いミドリイシ2種のサンプリングでした。この種が特定されれば大きな前進になりますし、ナンハナリの群集における表記自体が変わります。更に、この群集の規模をある程度、いや、正確に特定すること、これも大きな目的です。このふたつの目的をあるていど達成できれば、現時点でこの群集の規模の評価の公平性を獲得することが出来ますし、●●類のエダ状サンゴの大群集、といった少々あいまい、そして長い表現をしなくて済むでしょう。調査結果についてはまだまだ解析をまたねばならぬこと、継続調査が必要なことがありますが、わかり次第、報告できればとおもいます。いずれにせよ、この海域が閉ざされることなく、そして綺麗に使われていくことを望んでいます。そのために自分が出来ることをひとつひとつ、ゆっくりしてゆこうと思います。

そして先日、ナンハナリにおける最大の優占種のミドリイシの仲間は、遺伝子解析の結果、更なる調査研究が必要との判断がされました。来週より、日本でも屈指のサンゴ研究者の方々が久米入りし、更なる調査をすることになります。遺伝子解析でも明確な答えはすぐには出せず、水深や地域など、生息環境で様々に骨格形状を変える可能性があるそうです。この事実は自分にとっては種の同定を待ちわびているもどかしさより、もっと大きな視野での可能性を感じさせるものでした。

ところで、ナンハナリの群集が広く知られることとなったことで、自分も様々なことを新たに学びました、そして様々な教示もいただきました。その中でもっとも多かった指摘は、それは昔から、違うところにも、どこにでもあったんだよ。というものです。これは本当に島の多くの方々から伺いました。これは変わらぬ久米島の海の豊かさと、島にあるものをこれからも在るように、大事にしてゆこうね、という先人の知恵でもあります。同様のことは、久米島以外の沖縄他島の方々にも少なからず指摘されていることと思われるのですが、ところが当初、自分はそうした今回の報道について、アメリカ大陸発見、のような、そういったことをことさら訴えたいわけでないのにな…。と、そういわれて思い詰めてしまった時期がありました。しかし今ではそれは、大分思い違いをしていたのではないかと思っています。このことは実はとても大きな可能性を秘めたあらたな発見の扉であるからです。

今現在、サンゴというものは皆さんもご存知の通り少なくない利権をうみます。離島における持続的な経済振興というフレーズはこれを多分に含んでいますし、それについては自分も多くの点で賛成します。ただこれとは対照的に、観ること、識ることを、護るというキーワードのもと、過度に規制することも充分に警戒しなくてはなりません。病む苦しみを知らぬ者が人の痛みについて鈍感なように、大切にしたい、いや、人にとって必要に不可欠な対象であるのにそれを認識すらしていなければ、人は本当に僅かなものしか守れはしないでしょうから。守る為に秘す、という方法はもう極めて特殊なケースでしか使えない手段であると同時に、すべての生態系に影響を及ぼすカテゴリーでこれをすることは必ずしも賢明ではないでしょう。
たとえ酸素も二酸化炭素も、光合成も、ろ過も、多様性も、多くのの言葉を正確に理解できない小学校低学年の子供達でさえ、このナンハナリの海域の美しさと広大さ、それが地球に何を及ぼしているのかについて知ってもらうことはできます。それを知ったその日から、その子達は積極的にこの海域を破壊しようと思うでしょうか? ただ知る、たったそのことだけで既に何かを守ることが出来るのです。

こういった様々な問題について、今自分が語れることはそう多くはありません。ただ日本中の今回多くの皆さんに改めて認識されたこの大群集は、人にとってかけがえのないものであると同時に、お金のなる木でも、宝の山でもないとは思います。今もっともこの海域に近いであろう、スクーバダイバーの皆さんにどうしてもお願いしたいことは、とりあえず見てみよう、これは一度は見てみないとね、という類のものとしてこの群集をどうか捉えていただきたくないということです。地球の不思議が紡ぎだしたこの海域の価値は、そのような尺で計って見えてくるものではありません。そして自分は今まで通り、ダイビングスタイルの回帰の場として、そして台風接近時でも利用できる貴重なポイントとして数ヶ月に何回かでいい、あくまでたまたま、訪れることが出来ればそれで満足です。

ナンハナリについては新発見という方向から眺めてばかりいてはは本当の姿は見えないかもしれません。なぜなら事実、これと同様の比較的深い水深におけるミドリイシ類の群集というのは、久米島の別の海域だけではなく、場所と海域は敢えて伏せますが沖縄の他島でも数箇所で自分はこの眼で確認しているからです。滅多に他の島で潜らない自分ですらそうなのですので、これが意味することは明らかです。そう、この群集の状態自体が珍しいことではないのです。

今回の真の発見とは、自分が伝えたかったことは、沖縄には我々が今まで研究者も含めまったく気に留めなかった海域に於いて、久米島だけではなく、あらゆる島々に、すべての海域において、もしかしたら合わせたらとてつもない規模に達するような規模で未知の偉大な生物の大群集が存在し、自分達人間が今まで考えもしなかったやり方で地球を廻している可能性があるということです。僕はその可能性を絵空事とはまったく考えません。

僕は今、それが知りたいのです。

久米島のサンゴ大群集 -4-_a0060407_13573735.jpg


-海人・裕二とナンハナリ上空にて-
Commented by cleo at 2010-08-19 20:15 x
実際、ナンハナリに潜らなくても
イメージするだけで、いい夢が見れそうです。。
海は、母のように強い。

いい報せがあると願います☆
Commented by colorcode at 2010-08-20 06:32 x
cleoさん:来週の調査は様々な事情でフル参戦はできないのですが、少しでも力になれるよう、お手伝いをするつもりです。またなにかわかったらUPしますね。
Commented by ミツバチ at 2010-08-20 22:57 x
ナンハナリ、その後どうしたかなぁ~と
チョット気になっていました(^^ゞ

来週の調査がうまくいくといいですねぇ。。。


Commented by color-code at 2010-08-21 17:26
このところに水温上昇で少し白化があります。
注意深く経過を見たいと思います。

浅海のサンゴはほとんど白化の被害を受けていないですから。



by color-code | 2010-08-18 13:58 | ナンハナリ大群集・サンゴの話 | Comments(4)

沖縄は久米島にある小さなダイビングサービスです。


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