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2016年サンゴ白化後半の状況

台風10号は結局、沖縄本島地方の東海上にとどまった後、本州へとUターンしました。想定外の進路であったし、特に東北、北海道への甚大な被害は心が痛みます。用心の範疇を超えた風雨が襲ったのではないでしょうか。今後の復旧がどうか速やかに行われますよう祈るばかりです。

北風の日が珍しく数日続いたため、浅瀬の水温は暫定的に29度台に下がったが、すぐに30度台まで戻るだろう。結局8月まで一度も台風が接近しないまま、久米島は初秋へと向かおうとしている。状況は当然ながら劇的な改善とはいかず、初期の7月に白化が始まったサンゴ群体の多くには既に藻が生い茂り、礫へと変わりつつある。

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とりわけ1998年に起きた今年と同規模の白化を経験してきたダイバーは今、複雑な感情を抱えながら海に潜っていると思う。白化したサンゴ達の多くはもう手遅れで、生き残った群体も疲弊しているものが多く、ただただ回復を見守るしかないという諦めのきもち。そしてサンゴは海が元気である限り、自分たちが思うよりはるかにしたたかで力強く、数年で驚くほどの回復をしてくるという事を体感として知っているゆえの楽観。
そんな相反する感情の奥に沈んでいるのは、この白化を死の直前の美しさとか、回復への願いとか、地球がおかしくなっている。など、そういった表現を使って発信することへの、ある種の後ろめたさだ。


実は、今から18年前の7月、僕達ダイビングガイドはこの状況を理解していなかったし、数か月後を想像できなかった。8月号あたりのダイビング誌は、各国の海中がパステルカラーでとっても綺麗ですよとか、まるで樹氷みたい! といった軽いトーンのレポートであふれていた。
褐虫藻や白化などという単語をほとんどのガイドが知らなかったのだから仕方ない。そしてその1か月後、目の前の光景を見てようやく悟り、研究者、報道の見解も聞こえだし、喜々として潜っていたひと月前をひどく後悔した。更に当時のガイド達の間には、海の事は何でも知り、より最新の珍しい知見や生物を見せる、撮らせる事が至上という空気がダイビングシーンの本流であった為、時に自分たちの無知を責め合うような事も起きた。事前に知識があっても止めようもなかったのに。


僕はというと、澱のように溜まったこの感情を、今も心の奥にしまい込んで今年のサンゴを見ている。
たとえばクマノミと共生するイソギンチャクが主に白化によって死ぬ、あるいは引っ越した例を、僕ははっきりと思い出せない。大半のイソギンチャクは晩秋には褐虫藻を再び獲得するだろう(このプロセスをこそ今知りたい)。サンゴの白化を原因として家を失う多くの他の魚と比較すれば、クマノミの生存率は遥かに高いに違いない。
白化したイソギンチャクに寄り添うクマノミ、というわかりやすい記号の隣に、本当に生存の危機にある生物が無数に居る。数回目の白化の季節を経て、僕の中でこのずれが次第に大きくなってしまい、そういった手法で表現すること、見聞きすることに、なにか違和感がある。
蛍光色に満ちた海は異様であるが、美しい。でも悲惨だ。美しさや綺麗さだけが強調されて現地から発信され続けることはいくつかの危うさも抱えていると感じる。

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すぐ隣に同種の健康なサンゴが立ち、いつもどおりにスズメダイやゴンベ、甲殻類に住居を提供している海の不思議を目の当たりにしながら今日も潜る。このまったく同じ形状のサンゴ群体は実は別種なのだろうか、それとも隣り合ったわずか数センチの立地に乱流などによる劇的な環境の違いが生じているのか、非常に狭い範囲で、まさかなにかしらの耐性を獲得しつつあるのか。そもそも褐虫藻は一体何種類居て、高海水温、phに対する耐性はそれぞれどう違うのか、いや、その前に水中にそれこそ空気のように比較的均一に漂っている生物なのか。何度目かの大規模な白化を経験しているにも関わらず、相変わらずほとんどの事はわからないままだ。
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カンザシヤドカリが住むサンゴもこうして藻が付いたものが多くなった。この状態から彼らはどのように生きてゆくのか。そんな素朴な疑問に解答が出ない。

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宿主が礫化したら家を失うこうしたハゼの仲間達にとってはかなり厳しい状況。すぐ隣に競争の無い状態の宿主があるという奇跡が必要だ。


スクーバダイビングはとても楽しくて奥が深い遊びだから、この現実をしっかり受け止めよう。折しも海中は学生さんの合宿シーズン。人間の愚かさを嘆くのではなく、海やサンゴに対する興味や驚きに昇華していただけるような一日にしなくては。方法は無限にある。頑張ろう。
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Commented at 2016-09-04 21:03 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by color-code at 2016-09-06 06:45
コメント残してくださり、ありがとうございます。
ケラマ諸島も島によって進行度合いが微妙に違うようで、やはり複合的な要因なんだと思います。人間が介在していることだけは間違いないことなので、身近なところでなにか改善できることを日々実行しようと思います。
by color-code | 2016-09-01 13:03 | ナンハナリ大群集・サンゴの話 | Comments(2)

沖縄は久米島にある小さなダイビングサービスです。


by color-code