久米島に回遊してくるザトウクジラ達

鯨はいつまで経ってもあまりに魅力的すぎて、心を凪ぎに保つことが難しい。
咆哮のような呼吸音を上げて潜降し、仲間を電柱を束ねたような大きさの身体で叩きあい、飛び、船底から響きわたるくらいの轟音で歌を歌う様はまさに巨獣、それなのに漆蒼の水中をスローモーションのように移動してゆく彼らは時に奇妙に現実感がなく、宇宙空間に浮かぶ未知の生命体のようです。

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ただこの出会いはあまりに鮮烈なものなので、長く記憶にとどまり、時に気づかないまま惹かれ引き込まれてしまうことがあります。彼らに会いたい、もっと近づきたい、もっといい写真が撮りたい。。。自分がそうだったように、まるで麻薬のような枯渇した感情を何年も心の奥に燻ぶらせ続けることもあるのです。あの海に居た数時間、自分は何と向き合っていたのだろう。鯨だろうか、自分の欲だろうか、そんな時、わからなくなります。そしてこの感情は今でもコントロールすることがとても難しい、とても。これは鯨に魅せられた人が多かれ少なかれ、感じ、考えていることかもしれません。


ザトウクジラ達が今年も久米島近海を訪れています。島回りに来たのが1/23、かれこれ1か月経って個体数も増えました。今期は島の近いところに居てくれることが多く、おかげでダイビングの合間に観察できる機会も増え、記憶に長く残るうれしい出会いもいくつかありました。掲載した画像はそのうちの動画に収めたものを切り取った画像です。ここ数年間でもまれにみるリラックスした船上とダイバーの方々、そして鯨が起こした数少ない出会いの数分間でした。彼らの滞在もこれから終盤。3月中旬には北に向かってまた旅立ち始めます。


僕は彼ら鯨との関係は、物理的な距離の長短にあまり関係がないということに確信を持っています。。むしろ近ければ近いほど、人は様々な欲にのまれ、野生である彼らを遠ざけてしまうことがあるからです。
鯨と共に海で時間を過ごすことは、まさに自分についてゆっくり考える時間でもあるとも考えています。そう気づかせてくれる生物に出会えたことは幸運な事でした。大切な贈り物です。そうなったいきさつは以前にもいくつか書いたので、興味のある方はお読みいただければ幸いです。
そしてこの時期に鯨とダイバーの皆さんとの橋渡しをすると同時に、野生とのボーダーライン上に居るサービス提供側として戒めになっているのが、写真家水口博也さんのサイトのこの記事です。はじめて読んだ時から今後もずっと指針です。たどり着ける境地では到底ありませんが、ブレ続けようとも同じ方向だけは向いていたい。


僕は今後もエンジン音のない波と風の音の中、自分の思うようにならないかたちで、来るなら来てね、そしてたとえ彼らが眼には見えずとも。そういう風に彼らと会えたらと願います。そしてそんな願いを託せる生物が共に住むこの地球は本当に素晴らしい。
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by color-code | 2018-03-01 09:29 | クジラ・イルカ | Comments(0)

沖縄は久米島にある小さなダイビングサービスです。


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