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スナイパーになりたい

気づかれないような遠くの間合いから、いつの間にか見られ、撮られていた。まるでゴルゴ13に狙撃されたように。そんな風に撮影出来たらいいのに。
自分がもし、被写体の側にあるなら、ある全く異質な存在にそうされるなら、そうしてほしいし、それはそれでいいから間合いの外で出来るだけやって欲しい。ちょっと人間的になってしまった。でもネイチャーウォッチングの基本的姿勢もそれに似通ったものなのだと思う。欲をコントロールし、集中し、敬意をもって間合いに入らない。だから双眼鏡や超高倍率レンズ、暗視カメラ、高感度マイク、ファイバースコープ、等々、人に使ったら変態、いや、ほぼ犯罪の機材を駆使する。
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卵を孵化するまで守るモンツキカエルウオ。
かわいい。が、警戒心がすご…。卵守っているから当然だけれど、警戒してくれない事には卵と一緒には撮れないわけで、こうしたジレンマはダイビング中しばしば起きます。例えば転石下に住むキンチャクガニは、天井の岩(隠れ場所)を取り外さない限り、日中はまず観察出来ない。ゴルゴ13だって、どれだけの入念な準備と超人テクで狙撃をしたところで、その1分前に対象が心筋梗塞で自然死してしまったら不成立。あくまでも自ら放った銃弾でないと報酬が手に入らない。美学を貫くのも大変です。

ただやっぱり理想としては、気づかれないような遠くの間合いから、いつの間にか見られ、撮られていた。これが一番なわけです。時にそれがキレイごとであろうと、出来ない時があろうと、方向だけはそっちを向きたい。
「生物に激突するくらい寄って撮ったすごく綺麗な写真より、遠くからじっくり見て楽しんで、ぼんやりした写真かもしれないけれど、そんなあなたの心の方がずっと綺麗です。」
そう自信を持って言い切りたいじゃないですか。

今回の画像は、対象の生態をそれなりに描写した写真ですが、生物観察の姿勢から見て、志から大きく踏み外れた写真。なんだか社益と顧客満足との板挟みになっている中間管理職みたいな終わりになってしまったけれど、そんな事をくよくよ考えながらこれからもフィッシュウォッチングを続けていこうと思った晩秋の久米の海でした。


by color-code | 2018-11-30 09:40 | うみのいろはそらのいろ | Comments(0)

沖縄は久米島にある小さなダイビングサービスです。


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