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Panasonic GX7MK3ハウジング【INON X-2】レビュー

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INON製のPanasonicGX7MK3用ハウジング、X-2 for GX7MK3がようやく発売された。自分自身数シーズン、新しい機材導入を見送ってこのハウジングを待ち続けてきただけに感慨深い。
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ボディのGX7MK3は、初代からコンデジ並みの小ささであり、3代目になったこの機種でもそれは変わらない。性能も定評があり、画質の要であるCMOSは同社のフラッグシップ機と同じ、ローパスフィルターレスの2030万画素のCMOSセンサー。AFのアルゴリズムも同等に最新版にアップデートされており、画質、機動力共に向上している。背面液晶の画素数もUPされ、ボディ内5軸+レンズ内2軸のデュアル手振れ補正と、4K30fpsの動画性能を備える。交換可能なレンズ群はフォーサーズ規格らしく非常に軽く、コンパクトな設計が可能なため、システム全体を小さくできるというのは水中で大きな優位性だ。詳細はメーカーサイトで確認できる。ヨドバシカメラのサイトのレビューにある作例では、良好な色ノリと階調が印象的。素性のよい、正統進化を遂げてきたシリーズといえる。陸上でのグリップや質感を考慮すれば上位のカメラは多数あるのだが、基本性能は上位機種と同等のまま、コストを下げて小さくしたこのボディが、水中ハウジングと組み合わせて一回り大きくなった時のちょうど良さを作り上げている。水中ハウジング向けのボディだ。

さて、ハウジングだがINONのこのハウジングも小さい。耐圧も75m、数か月後には標準装備のリークセンサーに加え、バキュームリークセンサーがオプションで取り付け可能になる模様。これでもう水没の不安とはおさらばだ。小さいだけでなく、操作性についても随所にINONらしさが見られる。
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コンパクトな標準ポート先端はねじ込み式のネジ山が切ってあるのではなく、INONのマウント規格、LDマウントを選択できるのもそのひとつ。地味に見えてこれはポイントが高く、ネジ山より遥かにスピーディーに各種アタッチメントレンズを交換できる。ダイビング中、とっさにワイコンやクローズアップレンズを装着(あるいは取り外す)して撮影を再開したいといったシーンは意外と多い。これがネジ山だとかなりイライラすることがあるが、LDマウントならカチっとワンクリック。最も購買数が多い標準ポートにこの設計を施してきたところがINONならではと思う。
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35㎜換算14-42㎜の標準ズーム対応ポートで人間の視野に近いナチュラルな風景や生物の撮影を楽しめ、各種アタッチメントを装着して、マクロ~ワイド、虫の眼レンズまで網羅、実に様々な撮影ができる。

地味な改良ながら大注目してほしいのが拡張性における優秀さだ。通常、ストロボやライト等を増設する場合、ハウジング下部にベースステーを取り付け、更にグリップを付けそこからアームを展開して増設してゆくのだが、このベースステー、直接各種アームが展開可能で、アームをグリップと併用して使うことも可能なレイアウトに進化した。
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ハウジングにベースステーを取り付けた画像。新発売のボールアダプターが左右に1か所づつ取付可能。
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上画像のように、今までグリップアームだった場所にアームを直接展開できる、かつグリップにもなる。
体積/重量/費用、すべて減らせる目からうろこのアイデアである以上に、これはハウジング下部から容易にアーム展開が可能だということだ。
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例えばこのようなライティングも可能、自由度が格段に増した。これに伴い新たな撮影スタイルが生まれてゆくことだろう。更にホットシューベース兼用のベースがあらかじめ1箇所設置されている。ストロボやライトを増設しても、このハウジングのコンパクトさは失われることなくて済むのだ。このユーザー優先の設計、高く評価したい。ちなみにこのベースステーシステムは汎用性がある為、ほかの多くのハウジングでも使用可能だ。
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新開発の高倍率のクローズアップレンズの解像感もすばらしいので、ぜひ実際に体感してほしい。
作例:14-42mm(42mm側)+UCL-67
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ワイドコンバージョンレンズは愛用者も多いUWL-H100が対応。画面のケラレなく、水中画角100度の広角撮影が可能だ。これはGoPro等のアクションカムと同等の画角。さらにドームレンズユニットを追加すれば、140度の超広角まで広げることができる。
作例:14-42mm(14mm側)+UWL-H100+ドームレンズユニットⅡ

このように標準ポートと各種アタッチメントレンズで大半の水中撮影ニーズを満たしてしまうのがこのシステムの強みだ。

注意してほしいのがこの標準ポート対応のレンズ、現状キット売りしている標準レンズ12-32㎜ではなく、14-42㎜のほうだということ。レンズ鏡胴径・最大繰り出し長、撮影倍率は2本ともほぼ一緒なので、ポート設計で大きさは変わらないが、数字の通り最新型の方が広角寄りになっている。INONのワイドコンバージョンレンズは基本28㎜を前提として最適化されているので不要な画面四隅のケラレも発生せず、工学的にも勝る。これがキットの標準ズーム対応だと、ワイコンを付けると四隅が蹴られるので結局クロップするというひと手間が必要になり、光学的にも劣る。更にマクロ撮影では64㎜(対応レンズは84㎜)までと、マクロ撮影の幅が狭まることになる。ポート設計において大きさに変わりがないなら使い勝手を考えればどちらを採用するかは明白なのだが、キット売りしている後発のレンズを対応外にして前のレンズ対応にするというのは、なかなか出来ない決断だったと思う。こんなところにもメーカーの矜持を感じる。

静止画撮影だけではなく、4K30fpsの動画も、各レンズの画角のまま可能だ。しかも最新のアクションカムの数倍の大きさのCMOSと高性能のエンジンで、強力な手振れ補正が効いた状態で、ソフトウエア上でクロップして画角をロスすることなく撮影できる。ここらへんは動画で定評のあるLumixブランドの持ち味であり、水中撮影でも大いに役立つだろう。更に録画中でもシャッターを切って静止画を4Kで記録することが可能。いい時代になったものだ。


つまりこのハウジング+標準ポート+アタッチメントレンズ2枚(接写&広角)さえあれば、顕微鏡モードで水中コンデジ界を席巻しているTGシリーズ、ハイエンドコンデジ+ワイコンのワイド静止画、光学手ブレ補正で定評のあるSONYの4Kアクションカム、この3台を同時に水中に持ち込んだ以上の環境が手に入ってしまう。最新ミラーレス機としての高い基本性能に加え、汎用性と機動力を高い次元で両立しているといえる。

よりクリエイティブな撮影をしたいのであれば、一眼ならではの交換可能な豊富なレンズ群がラインナップされている。ポートとレンズを変更すれば、いきなり一眼ならではの別ステージの高画質ハウジングに変身する。画質と色ノリで定評のあるライカのマクロレンズ、ワーキングディスタンスを確保する高倍率ズームから汎用性の高い標準ズーム、さらには広角ズームにフィッシュアイ、等々、水中撮影で必要な画角をほぼ網羅しているので、より突っ込んだ撮影が可能だ。8㎜のフィッシュアイレンズを使えば超広角撮影が可能だし、マクロレンズも2本、更に200㎜の高倍率ズームレンズにもポートが対応している。
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LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm / F2.8を装着。35㎜換算90㎜のマクロレンズを付けてこの小ささ。ライカならではのシャープな解像感と色ノリ、更に最短で2倍撮影!である。ピントはINONのお家芸、MRSポートを使って陸上とまったく同じ操作が可能。50万円オーバーの一眼ハウジングでしか出来なかったこの撮影スタイルが、手のひらサイズで可能なこの優越感。先代よりより高精細になった背面液晶も非常に見やすく、必要であれば照度もかなり上げられるので、快晴の浅海でもクリアに構図を確認できる。EVFは使用できないが、僕はコンパクトさを取ってEVFをオミットしたINONの選択はアリだと思う。
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45mmを最短付近で。浅海のうねりの中の柔らかな風景を切り取る。ボケ味も美しい。
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45mm+UCL67を使用した高倍率撮影。ひりひりするようなカミソリピントとこの背景は、やはり一眼+マクロレンズならではのものだ。 
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ダークホース的な存在で楽しそうなのがこのLUMIX G VARIO 35-100mm / F4.0-5.6 35mm換算最大200mmの望遠ズームでもこの小ささ軽さ、フォーサーズ規格のメリットを体現しているようなレンズだ。フルサイズ一眼機の同等画角のレンズと比べたら大型トレーラーと軽自動車くらい違う。価格も数分の1以下。でもしっかり写るしAFも高速なので、飛び回るベラやどうにも寄り切れない被写体、寄ってしまうとその生態が観察できない生物等への飛び道具として強力だ。クローズアップレンズを併用することで長めの最短撮影距離も短縮できるので、超高倍率マクロ撮影も可能となる。今まで諦めてレンズを向けなかった生物の大半が被写体になり、撮影機会が劇的に増えるというわけだ。加えて35㎜換算70-200㎜というのは船上、陸上のネイチャーフォトでも使いやすいズーム域、イルカやクジラ、鳥など、水中から戻っても更に楽しめる2度美味しいお勧めレンズと言える。
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35-100mm(100mm側)+UCL-90 穴の中の卵を守るモンツキカエルウオ。寄り過ぎると奥に入ってしまい、光が廻り切らない状況で十分な距離を保ちつつ、この撮影倍率は驚き。
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LUMIX G FISHEYE 8mm / F3.5 35mm換算16mmのフィッシュアイ。元々評価の高いレンズ、なによりこの手に乗る小ささ。往年の名機ニコノスⅤ+15mmのデジタル版がようやく来てくれた感がある。個人的にはこの組み合わせがこのシステムに最もフィットしていて、そして美しく見えると思う。BCDにぶら下げておける小ささで、35㎜換算16㎜のフィッシュアイの静止画/動画が撮影できる自由さをぜひ味わっていただきたい。
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オリンパスTGシリーズにワイコンを装着したシステムとの大きさ比較。X-2+8mmフィッシュアイのコンパクトさに注目。縦横で一回り大きい程度、そして奥行きに至ってはX-2の方が薄い(!)のがわかる。
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とても素直な画角だと思う。解像感も良好。
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ストロボとのミックス光で。新作のINON-Z330ストロボ、スペック以上に遠くまで光が回る感覚、コンパクトかつ大光量、お勧めです。

最後に鋳造のハウジングとしてはかなりリーズナブルに攻めた価格設定で、ハウジング本体が対抗他社ハウジングより2~3割以上安い上、各種ポートは激安バーゲン価格。これを一眼クラスで組むならサイズと重さも段違い、価格も大幅にアップする。このコストパフォーマンスも高く評価したい。名機となる可能性を十分に持っており、拡張性についてもリーズナブルにできるという点で、コンデジ派、一眼からのダウンサイジングを検討している方にもかなり魅力のある製品といえるだろう。2019年、注目の水中撮影機材に仕上がっている。

【こんなフォト派ダイバーにお勧めします!】
・TGシリーズでの撮影に限界を感じてきた、色味や画質面で不満が出てきた。
・コンデジからアクションカムに乗り換えたいが、やはり静止画もきれいに撮りたい。
・コンデジからステップアップしたいが、既に持っているレンズやストロボも有効活用したい。
・旅行の重量的に厳しいので、そろそろ一眼のシステムを見直してもいいかと思っている。
・往年のニコノスみたいな使い方ができる小さな、画質的にも満足できる機材はないものか。

興味のあるフォト派ダイバーの方、今月から各ショップ、あるいはダイビングフェスティバル2019等でぜひ手に取ってみて欲しい。

Copyright 2018 INON. All Rights Reserved.(inon製ハウジング/各種ポート/レンズ)
Copyright 2018 Panasonic Corporation. All Rights Reserved.(GX7MK3ボディ)
Copyright 2018 COLORCODE 塩入淳生 (参考水中画像)

by color-code | 2019-01-05 10:13 | 道具 | Comments(0)

沖縄は久米島にある小さなダイビングサービスです。


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