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イザリウオの、あんまり使えない話

ダイビングをはじめて間もない頃、一番のお気に入りは、お約束のイザリウオの仲間だった。それは年月を経た今でも変わる事は無いのだけれど、その頃私が何故この魚に惚れ込んだのかいえば、エスカとイリシウムでも無く、その風貌でもなく、その驚異の捕食スピードでもなく、勿論和名の由来でもなく、胸鰭の基部に設置された、鰓口だった。口と鰓と連動して自在に可動し、噴射し、尾鰭を動かす事無くホバリングし、移動する。そのハイテク戦闘機のような装置に、私がマジンガーZを見ていた頃のように狂喜したのは当然のなりゆきだったかもしれない。ここだけ私のツボにはまってしまったのだ。
それからというもの、鰓口というその部位の名称をとんと知らなかった私は、バフゥゥー!って水出すから、バフゥー管! これでよし! と勝手に命名し、イザリウオを見つけるたびに水中で、「ねぇ、ねぇ! バフゥー管、見える? 見える!? 撮って、撮ってぇ! 顔、いいから、要らないから。後ろ45度からこう・・・」等とふざけた事を今でも叫んでいるような、真性の鰓口フェチになってしまったのだった。その後数年を経過、私はイザリウオのフォトストックというものに今ひとつ乏しい。理由は、「ほぼ鰓口しか撮らない」からである。足フェチなど、これに比べれば可愛いものだと自分でも思う。そのうち鰓口だけ見て、これは○○イザリウオですね!・・・出来ん。さて、下の写真は、最近の私のヒット、いや、バカ作、綺麗なエナガイザリウオの鰓口です・・・最近は、こいつが鰓口を出力MAXで使用し、砂煙を上げながら頭上に吹き上ってゆく絵をバック黒抜きで撮れんものかと悪戦苦闘していますが、どうも満足に撮れません。どなたかお持ちでしょうか?・・・皆様・・・バカだと思って軽く流してやって下さい・・・。

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イザリウオって、タコ並に変形するかもしれない・・・。と、思い始めたのは数年前の事だった。とあるダイビングポイントに、小さな根があった。そこには体長十数センチのソウシイザリウオが住み着いており、日中は発見できず、おそらく根に無数に空いた穴の奥にいるらしかった。彼は、いつも日没直後に出勤する。いつも決まって3センチ程度の小さな穴から顔を覗かせ、そのまま大きな顔を、その穴の輪郭に合わせてカパッとはめ込み、その後熱心に、グハァァァ・・・っと口を開けたりしている・・・バカっぽくて大好きだった。それでいて、きちんと出勤時間は守る。パチンコの開店には徹夜明けでも出勤するセミプロのようだ・・・ふと疑問がわく。こいつはこの根から、一生出ないんだろうか? そう思った数日後、彼は私の疑問に答えるかのように、3センチの穴からどう見ても5センチの高さはある顔をグニっと変形し、そのまま胴体を抜き、イリュージョン並の抜け技をやってのけたのだった。
その光景が頭から離れなかった私は、最近、決心をし、とある行動に出る。ガレ場の礫の奥深くに日中は潜んでいる事が多いイザリウオモドキを、引っ張り出して1時間近く、私と遊んでいただいたのだ。正直、ここにしか書けない事でしょうけれど。イザリウオを引っ張り出して、要は1時間苛めてたのですから。でも結果、彼の協力で面白い事がわかりました。イザリウオモドキに限っていえば、もう駄目・・・どうやっても逃げられん・・・。と観念した瞬間、多くのクモガニの仲間と同じように、擬死行動とも見える行動を起こします。下の写真がそうです。普通、彼らの顔はイザリウオの仲間の中でもトップクラスのデブ顔で、正面顔はものすごく可愛いのですが、限界を超えるとハリセンボンのように、膨らむのです。これは比喩では無く、完全に球形に変形します。丁度、魚が死に、ガスで身体が膨れたような、少々グロ(?)な形です。尾鰭は写真のように、身体に沿って丸め込まれ、小刻みに尾鰭を動かし、バランスを取るのみ、その膨らむまでの所要時間、3秒程度。そのまま地面に着いたらもう、表になろうが裏になろうが関係なし。全く無抵抗。うねりに任せて地面をゴロンゴロン・・・・そのまま死体のまま・・・30秒ほどたった頃でしょうか・・・、膨らんだままゴロンと仰向けに寝ている彼が、じぃぃーっと私の様子を覗っている・・・。「まぁ、そろっとOK・・・かな・・・?」と言ったかのように、しゅるしゅるとお腹をへこませて(この間10秒程度。あの膨らむお腹には何が入るのか・・・そんな基本的な事を、私は知りたい・・・)、とっととガレ場へと逃げていくのでした。私はこの光景を見て、これでまた新たにイザリウオに豪華スペックが追加された事を確信したのでした。スペック名「かなり変形可能」。
そういえば、2年ほど前、どう考えても入らないと思われる体高の半分にも満たない穴にスルッと入り込み、途中で穴が終了、尾鰭だけバレバレのイザリウオモドキかムチイザリウオも見た気がします。ただこれは、イザリウオモドキの様に、カイメンや岩の表面にへばりついて擬態をするのではなく、ガレ場の礫が詰まった奥に生息している事が多い、という、生息環境がそうさせているのかもしれませんから、例えば体長20センチのオオモンイザリウオがそうするか? といわれたら、何とも解りません。

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面白い隠れ方といえば、ヒメヒラタイザリウオもなかなか笑える隠れ方をします。普通、カイメンや岩、サンゴの間などに胸鰭をくっつけ、擬態している事の多いイザリウオ達ですが、このヒメヒラタイザリウオは、その和名の通りの極端に平たい身体を利用して、時に反則的な擬態をします。浅場などで岩を裏返すと、その下に砂に半分埋もれて横倒しになって寝ているのです! 初めてそれを見たときには、彼は案の定ピクリとも動かないので、岩で潰してしまったか!! と、心の中がかなりドス黒くなりました。が、眼がジロッと僕を見て、のそっと起き上がったのでホッとしましたが。これはその時の写真で,わざとかなり遠めに撮ったら単にガレ場遠景になってしまい、困りました・・・。実はこの上に更にもう2枚、巨大な石が積んでありました。オイ君、こんな隠れ方されちゃぁ、敵わんよ・・・。

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by color-code | 2003-09-01 15:15 | 豪海倶楽部記事 | Comments(0)

沖縄は久米島にある小さなダイビングサービスです。


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