電動自動車の伝道士、久米島を行く
2005年 11月 24日
さて、戯言はここまでで、いよいよそのECOなプロジェクトの目玉、超小型電気自動車。これも実は2年前くらいから島内を数台が走り回っており、すれ違うたびに、??? と思っていたのだが、この自動車は、こんな崇高な使命を帯びて久米島にやってきたのだと気づいている島民はいったいどのくらい居るのだろうか、知る由もない。この超小型電気自動車は、現在島におそらく十数台あり、そのうちの5.6台は、島に住む人間は勿論、観光客も全て、免許証さえあればいつでも島の東西2箇所の貸し出し場で、無料で借りる事が出来る・・・無料だ! つまりレンタカーとか借りなくていいのだ、素晴らしい事ではないか。観光に来た人が、排ガスの出ない車で、しかもタダでキビ畑を走り抜け、海岸沿いで潮風を感じる。あぁ、なんていい企画なんだ、僕はこれを考えて実行にこぎつけた島の役場と関係者の皆さんに拍手を送りたい。
この超小型電気自動車というのは、1人乗り、あるいは2人乗りの見ての通り、原付を少し大きくしたか、軽自動車を一回り小さくしたような形をしている。通勤や一人暮らしの人間が、2000ccの車を一人で乗る必要が無いのは明白。週末の家族サービスはレンタカーで済ませ、通常移動にはこの電気自動車でスマートに、エコにいきましょうや・・・素晴らしいコンセプトである。しかし真にこいつの凄いところは、一人乗りなら、原付扱いで、ノーヘルで良く、当然車庫証明ナシの自賠責激安、つまり維持費が原付と同じということと、圧倒的な燃費コストだ。こいつは約55円の電気代で約85キロ走る(平地なら)。つまり、10キロあたり7円で走ってしまうのだ! 仮に2000ccクラスのセダンがリッター125円で、12キロ走るとすると、10キロあたり104円・・・コスト差は歴然、以前に相手にならないのだ。年間1万キロ走るとして、この小さな車は税金と、2.3年で交換が必要なバッテリーを含めても5万円/年以下、対して普通車は任意保険も含めれば少なくとも23万以上/年はかかるだろう。確実に1/5以下のランニングコストなのだ。問題は初期投資で、需要がまだまだなので、国が結構な金額の補助(20~35万)をしても、やや高い。1人乗りの1番安いもので、補助を受けても新車50万くらいだから。あとは家庭用電源で充電に8時間はかかる。200V電源なら、半分の4時間だが、燃料電池車も控えている現状でこれ以上のインフラ整備は望めなさそうだ。でも1周23キロのこの島なら、通勤程度なら全く問題はないだろう。最高速度50~60キロも、島の環境としてはこれ以上出てもらっても困るくらい。これが2人乗りになると、途端に軽自動車扱いだから、利便性と税金問題の狭間で悩む事になる。ここはすっきり一人乗りと割り切った方が使いやすいかもしれないと感じた。
百聞は一見にしかず・・・乗る。
近所の懇意にしているホテルの駐車場が貸し出し場のため、行くとあっさりOKが出る。3台並んでるうちから好きなの選んで乗ってけと・・・・さて、どれにのるか・・・。
①
これが数年前から島を走る一番馴染みのある一人乗り。一番安く、大きさもピザ屋の宅配原チャリ並み。個人的にどうにも許しがたいのがこの奔るオトコのトラクター的フェイスデザイン・・・もし所有していたら、このフェイスだけは何としてでも変えてしまうだろう。
②
・・・却下します。これに乗るなら3輪車で街中走ったほうがマシでしょう。近くに乗った人が居たので直撃インタビューする。開口一番「恥ずかしいよ、これ。100%振り向かれる。」・・・やっぱり。ポケバイで小学生のチャリを煽るくらいに恥だぞこれは・・・。運転席周りの微妙なレーサー気分にさせる演出が泣かせる。左のレバーはギアではなく、サイドブレーキ。ハンドルの真ん中に輝く赤は、勿論、跳ね馬ではない。ちょっと遊びすぎですね、やっぱり。
③
これもなにか出展が知れそうなフェイスではあるが、至ってノーマルなデザイン。2人乗りの軽自動車扱いで、航続距離も80キロと3台中、一番長い。内装も普通に「昔の軽トラック」。多分最大公約数は、これ、だと思います。
とりあえず①に乗る。エンジンキーを挿し、回す。5秒後、ホテルの係りの人に、「すみませーん、これエンジンかからんよー。」・・・かかってるってば。そうか、電気が通じればいいのだから、始動音なんかしないんだ、現に燃料計(電圧計)の針は上がり、OKランプが点滅している。さて、車庫から出よう。ギアというものは存在しないらしい。そりゃそうだ、モーターに流す電気の量で回転数を調整するのだから、ギアもこんな風に回転式のシンプルなものになっている。バック>>>ニュートラル>>>エコモード>>>ハイスピード、これのみ。注:下の画像のインパネの、右一番上のダイヤルが現在一般の自動車でいう、ギアにあたる。
さて恐る恐る走り出す。初めての感想。エンジンが回転する感覚が足に伝わらないアクセルなんぞ、怖くて公道で踏めるか・・・マジ恐る恐る、うぉ、動いた!! って感じです、しかも無音で。ギアが無いので、半クラッチが無い、ATのように、アクセルを踏まなくても微妙に前進かバックをするわけでもない。つまりアクセルを踏まない限り、完全なニュートラル状態なので、坂道では操作にちょっと慣れが必要だろう。事と次第では、アクセルとブレーキ両方を微妙に踏んでいるという走り屋ばりのテクが必要かもしれない。でも一旦動き出したらモーターの回転音がウィィィーンと鳴り出して、結構回してるっていう感覚が出てくる。これは室内の中だから解かる事で、外はほぼ無音。思い切ってアクセルベタ踏みしてみる。とっても馬力の無いATの軽自動車並みには加速するので、ここは及第点。50キロまで出すと、ボディの剛性、サスの甘さのせいか、ちょっと怖くなってくる。でも島で走る分には50キロ以上はそもそも必要ないので、最高速も及第点だった。でもさすがに坂道は厳しい。明らかにパワーが不足している感は否めない。ちょっと体格のいい人が乗り込んで、荷物も積んだらこのパワーにはいらつきを覚える人もいると感じた。航続距離については試せなかった。バッテリーゼロになるまで走ることは出来ないので当然ですが。約20キロを試走して帰る。
①②を乗り終え、さて、改めて試乗レポート
【良い点】
圧倒的にランニングコストが安い。最大にしてほぼ唯一のメリット、しかしこれが超強力すぎるので、他のメリットが明らかに霞んでしまう。スタイリング、乗り心地、航続距離、最高速度、この乗り物における基本的なデータに対する不満を一気にプラスに転じてしまう圧倒的な燃費コスト、税金の安さだ。
まずこのように、結果はいいからなんとか環境についてなにかしてみようと思った島の行政と関係者に最大限の賛辞を贈りたいと思います。この行動が、更なる環境保全意識をきっと産みつづけるだろう。
【悪い点】
安全基準は無いに等しい。2人乗りの軽自動車扱いの車両でさえ、時速30キロの衝突で、簡単にペシャンコになりそうな剛性感の無さで、原付にプラの囲いを付けた感じの軽さ感が、走行中どうしても抜けない。1人乗りはそれでもよいのだ、そういうコンセプトで作られたのだし。しかし2人乗り軽自動車扱い車両で、ある程度の普及を目指すなら、ここは避けては通れないとおもった。乗り心地とか速度は捨ててもいい、でも安全、これは捨てたら今の時代、売れないと思います。今のところ、物珍しさで回りの車と人が気を使ってくれているから深刻な事態にならずに済んでいるにすぎない気もする。
バッテリーの、新技術開発が本当に急務だとおもう。燃料にあたるバッテリー自体が廃棄物としてかなり環境に負荷のかかる代物というジレンマを、電気自動車は根本的に抱えている。この問題と、飛躍的、と形容される程度の高出力、高容量、これを今にでもクリアしてゆかないと、ハイブリッド以外の電気自動車の未来は正直、暗いとおもう。これは電動アシスト自転車の普及が進まない原因のひとつでもあるだろう。
上記に関連することで、走る快楽、というものには徹底して無関心な車だ。人間は欲深くて快楽に弱い。たったひとつでいい。このツボに触れてほしかった。その点、HONDAの新しいハイブリッドカーのキャッチコピーは興味深い。さすがにここらへんのところを良く解ってるメーカーのキャッチだと思う。
結論
程度の良い中古一人乗り、15万なら買う。バッテリーは開放式のものを使用しているが、密閉式の航空機用などの高性能バッテリーに換装したら、どうなるか興味がある。ボディ、サスなどの基本部分は原付に毛が生えた程度なので、かえって改造の幅は広いかもしれない。エコを最優先目的と思って買うと、失敗しそうですね。損得勘定と、遊び気分で乗る車です。
ただで貸してくれるなんて、知らなかったー。今度借りてみます。
デザインがちょっとかっこわるいけど、なかなか使えそうデスね。
ぜひ②に乗ってください、そして店に乗りつけてくださいー!!
ウェット着たままトロトロと走っていくのもなんか楽しそうなんだけど(^-^)
ちょっと遠いな~さすがに寒いだろうからパス。