ナビィの恋
2005年 12月 09日
この監督はとても好きだし、特にこの作品はここ10年近い間隔で思い起こしても、アニメーションも含めて五指に入る邦画だと思っている。琉球の普遍性と柔軟さを縦横に織り交ぜながらの見事な展開と配役の妙と名演、そしてこの映画は優れた文化論であり、記録映画でもあるという、非常にゴージャスな野心を持って作られている事を、今回観てあらためて確認したのだった。これだけの要素をたった九十分たらずの娯楽映画の時間枠に詰め込むことは、挑戦ではなく、むしろ積極的に愚挙と言われる風潮にある昨今ではあるが、監督は驚くべきバランス感覚をもってエンドロールまでこのファンタジー、いや、沖縄を、全編にわたってハレのまま織り上げることに成功している。この奇跡を呼び起こした根底には、二十数年前に琉球を訪れ、そのまま移住してしまった私と同じくやまとんちゅーである監督自身の映画への自己投影がある。
実は作品中の福之助は、氏、自身であったのかと、観客はラストの夢のさなかに居るような美しい庭で繰り広げられるカチャーシーの万華鏡の中で、はたと気がつくのである。本当に心にくいおまけ付きではないか。
なにか至上の食べ物を、過不足なくおなかいっぱいに食べた気分にさせてくれる映画でした。
もしこれから行く映画に迷っていたら、是非このサイトに行ってみてほしい。もう決まったも同然だ。
http://www.mizunoharuo.com/haruohon5.html ハルオホン